無援の抒情 (道浦母都子)
2014年 02月 02日
ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いゆく
本日「無援の抒情」(道浦母都子)を読む。
この本が上梓されたのは1980年というから、なんともう34年も前の本である。
歌人道浦は1947年生まれ。33歳のころの作であろうか。
学生運動の盛んな時代を過ごした作家が、10年という時を経てのちの歌である。
客観的に自分を見つめられるようになってから、その当時の自分に身を置いて作りあげたものであろう。
祭りとその後のなんとも言えぬ寂しさが伝わってくる。
迫りくる楯怯えつつ怯えつつ確かめている私の実在
「今日生きねば明日生きられぬ」という言葉想いて激しきジグザグにいる
内ゲバに追われ学園去りし日もわれを映しぬ雨のキャンパス
リンチ受くる少女のかたえを通るときおし黙りおり啞者のごとくに
姉に似しわれなれば雨の隊列にいるなといいて去りし少年
サングラスかけねば見えぬ青春とテロあこがれる少年はいう
わが縫いし旗を鋭く震わせて反戦デーの朝を風吹く
by kanitachibana | 2014-02-02 18:21 | 短歌 | Trackback(1) | Comments(0)