6月8日讀賣新聞
2015年 06月 13日
青柿を踏んで畑に水運ぶ
島根県 重親利行
小さな青柿がたくさん地面に落ちている。一つ二つなら跨ぎもするが、、、。農を生業とするものには、通わなければならない道である。この時期作物は、喉をからからにして水を待っている。
夕闇の見ゆる高さに栃の花
上尾市 中野博夫
栃の実はかつて食用にされたと聞く。夕闇にみえる花が郷愁を呼ぶ。
田水張り村水平となりにけり
大垣市 大井公夫
水田は平らな土地にあるものだ。なおかつ水を張れば、村全体が一枚の鏡である。
<読売歌壇>
夕焼けの硝子戸燃ゆるこの路地をこころ急ぎてわが帰るなり
奥州市 白石忠平
かつて仕事が9時5時の形態であったころは、夕日と共に帰路につくのが日常の光景であったろう。何か嬉しいことが待っているのか、それとも心配事が待っているのか。赤い硝子戸が心さわがす。
無住寺の崩れ土塀の昼顔の咲いてひさびさ法会の読経
埼玉県 小林 実
畳みこむように情景を絞り込んで行って後半の経を読む声。秀逸である。
金丸座の回り舞台を支えたる昏き奈落は江戸のままなり
高松市 小林八州男
表舞台とは違って、日の当たらない舞台裏。見えない苦労は見えないままで良いのかもしれない。
ささやかなわが預金ある銀行の屋上看板見える病室
高崎市 門倉まさる
実景であろう。入院していても、気になることはいっぱいある、早く元気になって、この看板を下から見上げたいものだ。
この乳房の君の大きな手のひらにあまる分まで私を愛せ
岩手県 中沢水稲
情熱と不安。思いは言葉で表し切れない。だから何度でも口にして繰り返すのだろうか。
by kanitachibana | 2015-06-13 17:14 | 俳句 | Trackback(28) | Comments(0)