尾崎左永子歌集「薔薇断章」
2015年 11月 29日
尾崎左永子歌集「薔薇断章」である。夫と一人娘を病で亡くし、ひとりとなった尾崎の歌ということだ。
そのどれもが心を打つものなので、中川氏が抄出した歌をそのまま書いてみたい。
梨花白き夕闇のなか少しづつ失ひし時の量を悲しむ
八重咲きの白き木槿の花閉ぢてひそかに蔵(しま)ふわが心の喪(も)
娘(こ)の最期と知れどすべもなき病棟に人とは畢竟(ひっきょう)ただ禱るのみ
お前はもう充分堪へた吾娘(あこ)の死を褒めつつその髪撫でゐたりけり
逆光の街歩みをり抱へ来しなべての憂ひ照らさるるまで
夜おそく帰りし父にもらひたる遠き記憶のマロン・グラッセ
青葉濃き鎌倉山のほととぎす人想ふこころ剪(き)るごとく啼く
あるときは夢に来て咲け薔薇いくつこの世に咲かぬつぼみの未生
by kanitachibana | 2015-11-29 16:55 | 短歌 | Trackback(3574) | Comments(0)