第１３回「富士山を詠む」俳句賞作品集より その２

＜一般の部　入選句＞より
富士川に投網打ち込み鮎の宿　秋田市　田口穂心

銭湯の富士見てからの夕涼み　秋田市　柴田和蕾

誇らしく富士見えますと年賀状　白河市　北川春子

夏富士や異国の嫁は諸手あぐ　常総市　石塚明夫

白子干す日がな一日富士見えて　川越市　浜田はるみ

夏富士や指差し分かつ甲斐駿河　鶴ヶ島市　田村政男

初富士を肩の日の出に遥拝す　深谷市　瓜生律子

田面の富士素足で登る田植かな　比企郡小川町　藤間友二

一本も川なき富士や男梅雨　白井市　鈴木澄夫

吊し柿富士山頂の右上り　昭島市　宮下龍巳

江ノ島も富士も見たくて簾捲く　大田区　及川清厚

富士桜火筒の響き遠からず　世田谷区　野上卓

霞む富士空に指もてなぞり描く　中野区　池口智子

水つ洟忘れて富士に祈りけり　相模原市　川前明

富士暮れて茶山に残る寒さかな　横浜市　南野和歌子

夏雲や富士に生れて富士に消ゆ　大垣市　森茂寿

還暦の父が言いだし富士登山　可児市　梅田敏夫

富士山に太鼓の一打夏来る　御殿場市　内田秀子

箱庭の暮れ大富士の残りけり　駿東郡清水町　堤信彦

夏富士や母の眼の丸きこと　浜松市　鈴木文子

蜩の一声嗄れて富士明り　富士宮市　井戸畑邦夫

月一つ富士一つありことはなし　富士宮市　中原冨春

十六夜の大沢崩れの土煙かな　富士宮市　羽田てるみ

小春日の椅子が富士へと向けてある　名古屋市　小沢芳治

紅鱒の紅ひるがへり逆さ富士　吹田市　藤岡滿

ひと筆の山頂よりの夏見舞　西宮市　漠水

富士山に傘さしかけて田植歌　津山市　倉見英子

靴底の富士の鼓動や月見草　福岡市　大滝夕霧

藻の花や富士より水の生るる音　宗像市　藤崎由希子

夏の富士砲声ひびき夕迫る　出水市　秋山征男