7月9日讀賣新聞 よみうり文芸
2016年 07月 16日
医師の言ふ胃ろうの話たまさかに目覚めし母は駄目と目配す
二宮町 原 新平
子としてつらい決断である。病む者にも尊厳はある。そしてまた子とすれば、いつまでも母の子のままでありたい。
日に数度鉋(かんな)や鑿(のみ)を研ぎ直し家を建てたる時代過ぎしか
鎌倉市 長谷川州寛
「今売ると買った時より高いのよ」友は引っ越す夏が来る前
旭区 滝 妙子
言葉通り捉えるといたってドライな感じだが、別れのさびしさをそんな言葉で表したのかもしれない。
風まひる風のゆるゆる流れゆき六十過ぎて誇るものなし
金沢区 後藤 恵一
されど作者は知っているのだろう。しあわせは自分の中にあるものだと言う事を。
<俳句>
夕立の初めの粒を掌(てのひら)に
大井町 新井たか志
こういったうるおいのある日々を送りたいものである。
衣更して富士山のそゝり立つ
葉山町 関本 巴
三彩の角大皿や柏餅(かしわもち)
相模原市中央区 三十尾維大
エンジンの音に麦刈る独りかな
金沢区 広瀬 恒三
エンジンを止めた時の静寂が、また独りを感じさせてくれる。
鄙(ひな)の子や蛍袋を友として
山北町 武 昭好
平易な言葉が心に沁みこんでくる。
<川柳>
後ろ髪机拭かせて定年日
瀬谷区 秋道 博一
作者は、机を拭いてくれている女性の後ろに居るのだろう。「拭かせて」に感謝の気持ちが表れている。
by kanitachibana | 2016-07-16 18:27 | 俳句 | Trackback(4) | Comments(0)