<選者別入選作品より>
歳時記に増えたる付箋秋深し
武藤主明
ラムネ瓶笑い転がるガラス玉
水野美羽
筆箱の中身がかわる新学期
河野瀬那
スイカわりちちをしんじてふりおろす
川上大駕
波音を消す波音や盆の月
増田盛治
寒鱈や人魚は薄き乳房持つ
砂山恵子
見開きに健康と書く日記買ふ
佐藤和男
球場の空千匹の赤とんぼ
佐藤秀治
満ち欠けも現世のことと今日の月
吉田ひろ子
バス停を馬のすぎゆく大花野
下岡和也
ゆらゆらとゆれるいなほでねむくなる
生田目倖希
嫁入りの支度ととのふ桃の花
酒井一郎
安積野の雪に風紋開拓碑
藤井達男
白玉や父の知らざる母の恋
増田盛治
搾乳の小屋に唄あり百合の花
本田研心
寛解の菊に親しむ暮しかな
齋藤万亀子
ばぁちゃんの背中にとまった赤とんぼ
佐藤風夏
名月や最後に消して厨の灯
松村すみい
顔上げて祖母の手をひく夏の夜
橋本 陽
一着は運動場の夏つばめ
遠藤快仁
母の背をただ摩る西日の病室に
君島 忍
父母の声手繰り寄せたし合歓の花
岡部眞知子
以上選者別入選作品より抜き出したものである。小学生も大人も一緒になっているが、それぞれの年齢や生活環境がよく表されている。
第19回を迎えた今年は、19、234句が全国から集まったそうだ。主催者の苦労も大変かと思うが、全国でこれだけの人が毎年楽しみにしているのである。どうぞずっと続けていただきたいものだ。