森を散歩していると、時折一本の草木だけが揺れている光景を目にする。周りにはたくさん草が生え茂っているのだが、なぜかその一本だけが揺れているのである。
きっとその草木の足元に空洞があり、そこから流れだした空気が草木を揺らしているんだろうと思っていた。
でもこれは「渦励振(うずれいしん)」という現象らしい。聞きなれない言葉だが、もともと建築学においては一般的な言葉のようだ。簡単に言うと、その個体の持つ振動数と、その周りに渦巻く空気の流れの振動数が一致した時共振し、その個体を揺れ動かす大きなエネルギーが発生することのようだ。
かつてはこの渦励振が巨大な橋をうねらせ、破壊してしまったようなケースもある。また最近は、逆にこの渦励振を利用した風力発電も現れているとの事。風力発電にはおなじみの、あの扇風機の羽根のようなものが全くないのである。地表に立つ一本の棒が左右に揺れて発電するのである。
こういったことを頭では理解しながらも、周りの静寂とは別に一本だけ揺れている草木はなにか神秘的であり、自然に対する畏敬の念さえも感じさせてくれる。不思議だ、そう思って思考を停止させてしまうのも生きる愉しみかもしれない。