<短歌>
隊を組む十機のヘリに冬川の群れ鴨(かも)は乱れ葭(よし)は騒(ざわ)つく
中央区 落合 征夫
対句の表現が破調の効果もあり、時ならぬヘリの編隊におどろく鴨の様子がよく出ている。
<俳句>
まぶしかる空となりぬや木の根明き
二宮町 原 新平
直接の色彩表現を使わずとも、空の色、雪の白さ、土の黒さがはっきりと見えてくるようである。
若冲の叫びが耳に初鴉(はつがらす)
厚木市 石川 弘道
取り合わせが新鮮である。インパクトも強く余韻も残る。
小流れに沿うて歩きぬ寒の明け
宮前区 西 順子
日常の暮らしをさりげなく淡々と詠んでいるが、いかにも心地よい。手練れの業であろう。
<川柳>
清濁を併せて呑(の)まず無位無冠
二宮町 原 新平
無位無官とばかり思っていたが、無冠という表記もあることに初めて気付いた。
良くも悪くも全部呑みこむのが度量の広さ、と嘯く輩もいるが、許せないものは許せない。ならぬことはならぬのである。ただ、得てしてそんな御仁は組織には冷遇されがちである。それを承知の無位無冠は男の美学だ。
ふすま絵の美女と眠って老い枕
戸塚区 柴山 洋
妻の背を遠くで見れば観世音
都筑区 髙橋 幸治
そう、「遠くで見れば」が効いている。
豪快な字を書く割に華奢(きゃしゃ)な腕
藤沢市 妹尾 安子
思わず声を出して笑ってしまいました。理屈抜きの面白さも川柳の魅力なのでしょうね。