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12月12日讀賣新聞 よみうり文芸   

<短歌>
枸杞(くこ)の枝たぐれば傾(なだ)りの枯草に夕焼色の実のこぼれゆく
                              厚木市 石井美千代

 詩情あふれたみごとな歌である。情景が見えてくる。こぼれた実が、また転がって行く。

庭にありしベンチが消えて五十年モノクロ写真に影のみ残る
                       横須賀市 竹山 繁治
 思い出のベンチなのだろう。生活環境はどんどん変わって行く。形はなくなっても思いは深まるばかりである。

かけよりて酸素マスクに息はやき兄の手とれば強く握り来
                       平塚市 荒木 禮子

 なんとも切ない場面である。「息はやき」が緊張感を高めている。聴覚はいつまでも残っている、と聞く。ただ表現の手段が限られてくるのだろう。兄と妹の、手と手の会話である。

深草の「第一軍道」との地名タクシーに告ぐ「はい」と通じる
                         港南区 藤井 君
 世の中、情報はどんどん更新されている。公的な地図には記されていない地名もたくさんある。かすかにバス停や公園の名に、それをとどめていることがある。言葉が通じるというのは、生きてきた時代まで共有しているようでうれしい。


<俳句>
禅寺の長き廊下や月明かり
   横須賀市 尾崎美佐子
 かつての木造校舎などには、建物と建物をつなぐ渡り廊下がよく見られた。新しい建物ができる度、雨に濡れずに行けるようにと作られたのだろう。 禅寺の歴史と厳かさが感じられる。

薬湯に舌を焼きたる寒さかな
       宮前区 西 順子

 寒いと感覚も麻痺している。手の冷たさが、器の熱さも心地よいものと勘違いしてしまったんだろう。

番小屋のいつしか灯り鮭の川
      海老名市 安戸 悦
 映像的である。川にもまた人の暮らしがある。


<川柳>
徘徊(はいかい)の母が忘れた帰り道
      相模原市中央区 北 修二

 みんな何処をめざして歩き出すんだろうか。帰る、帰らなくちゃ、、、。
 つらいことである。先日も片側3車線の広い道路をふらふらと歩いている方があった。幸い、そこそこに混んでいて、スピードもそんなに出せる場所ではなかった。でも誰もクラクションなど鳴らさなかった。ドライバーは誰もが自分の親や身内を見たのだろう。その方を脅かさないように、のろのろと徐行を続けながら気長に車を進めていった。

振り袖の帯に疑綱(ぎこう)の鬼を飼う
      相模原市南区 坂本 嘉三
 「疑綱」、こういったわからない言葉に出会えるのも楽しいものだ。いろいろ調べてみたが、結局はっきりとしたことはわからなかった。
 ただ五百羅漢の一つに「除疑綱尊者」というのがあり、その尊者が鬼の上に座っていた。おそらくは、そのことだろうくらいの感触である。帯の飾り物の一つだろうか。振袖と鬼との対比が興味をそそる。

ハイハイとIC調理に妻の声
    藤沢市 市川 四郎
 最近の機械は、ピッピ、プップ、ピロリンとさまざまな電子音を発する。瞬時にその発生元を特定するのはきわめて困難だ。
 冷蔵庫でつまみを探している時など、ちょっと開放時間が長いと、すぐにピーピーと小うるさい。「ハイ、ハイ、わかりましたよ、、、」と私もよく答えている。








by kanitachibana | 2015-12-13 18:57 | 俳句 | Trackback | Comments(0)

12月5日 讀賣新聞 よみうり文芸   

<俳句>
夕暮れて秋明菊(しゅうめいぎく)の白さかな
            横浜市緑区 井上 誠一


<川柳>
菊人形修羅を隠したまま果てる
       逗子市 富岡 桂子

膝掛けを欣求浄土(ごんぐじょうど)に置いてきた
               海老名市 やまぐち珠美

三界を覗(のぞ)く女の針の穴
      高津区 佐藤 章子


by kanitachibana | 2015-12-11 21:55 | 俳句 | Trackback | Comments(0)

11月29日 神奈川新聞   

<神奈川歌壇>
私この頃少し変なり頭(づ)を振るとカラッポカラッポ聞こえ来るなり
                             麻生区 池内セイ子

くっきりと丹沢の尾根見えますとラジオが言うをわれも見ており
                          二宮町 桑山 俊昭

東京の秋は冷え込み一人居の三十路の娘は猫を飼うらし
                           藤沢 中田 毅

<神奈川柳壇>
一粒を拝みながらに飲む薬
      中区 小林不二子


<神奈川俳壇>
文机の位置をずらして追ふ冬日
       青葉区 菅沼 葉二

那智黒の在所にありて初時雨
      横須賀 鏡渕 和代

鶏遊ぶ庭までつづく稲架日和
      戸塚区 矢沢 寿美

通り矢が地名と知りし白秋忌
    横浜南区 森崎 貞夫

若狭まで峠いくつか初紅葉
      平塚 日下 光代


by kanitachibana | 2015-12-11 21:39 | 俳句 | Trackback | Comments(0)